pastak 30周年 祝いの言葉

pastak という友人がいます。彼が30才の誕生日を迎えるにあたって、彼が生まれ育ち今も住む京都で、一般成人男性のお誕生会にしてはかなり大規模なパーティーが開かれることになりました。

サプライズパーティーという趣旨で、本人にも参加者にも会場や内容が知らされることのないイベントでした。*1

参加して、光栄にもスピーチをする機会を頂き、祝いの言葉を述べさせてもらいました。

以下は、当日のスピーチの原稿に加筆修正をしたものです。公開する都合上、伏せ字にしていたり、当日話さなかった内容を補足していますが、大筋はそのままです。


こんにちは、株式会社 ___ CTOの杉本です。

普段は uiu という名前でソーシャルメディアXなどを中心に活動しています。 今回は1人の友人というよりも、大学の先輩を代表して、祝いの言葉を述べさせて頂きたいと思います。

僕がパスタ君と初めて会ったのは、僕が高校生の時で京都大学オープンキャンパス*2に行ったときでした。

僕が高校2年生で、彼が高校1年生のときだったと思います。今から10年以上前、暑い8月でした。 パスタ君とは91世代というはてなグループのコミュニティ*3を通じて知り合いましたが、直接会ったのはオープンキャンパスの時が初めてでした。

当時15才か16才の僕たちは、その先10年の未来でどんなことが起こるのかまったく知りませんでした。

まさか、2人とも同じ大学*4に入学し、同じサークル*5に入り、ビールを飲み、留年し、ビールを飲み、同じバイト*6をし、ビールを飲み、ビールを飲み、最終的に2人とも大学を中退することになるとは思ってもみませんでした。

高校生の時、初めて会ったあの時と今を比べても、やっていることは驚くほど何も変わっていなくて、僕もパスタ君も相変わらずパソコンでプログラミングをしています。 変わったことと言えば、酒を飲むようになったことと、パスタ君の質量くらいです。

左 2019年, 右 2014年

僕がこのスピーチを引き受けてすごく困ったのは、パスタ君に関して印象的なエピソードが何一つとしてないことです。

思い出せないのではなくて、特別なエピソードは本当に何一つとしてない。

パスタ君に関しての思い出が、僕の記憶から抜け落ちているわけではなくて、DEN-EN*7に飲みに行ったこと、冬の鴨川ビール*8の後にDEN-ENに飲みに行ったこと、などの楽しい思い出は昨日のことのように思い出せます。

DEN-ENにて (左から pastak, 僕, hitode909)

ただ、本当に特にこれといったエピソードが思い当たりません。

15年近く友人として接していると、普通、伝説とか武勇伝みたいな素敵なエピソードがあってもおかしくないと思うのですが、何一つありません。

しかも、今回はその人物のただの誕生日のために30人以上の友人が集まっています。とても異様なことだと思います。 人となりとしても、温和な性格で良い人間だとは思いますが、伝説や武勇伝のようなエピソードはなく、カリスマ性のようなものは特にないと言わざるを得ません。

じゃあ、なぜそんなパスタ君の周りにこんなに人が集まるのか?

皆さんそれぞれの理由をぜひ考えてみてほしいのですが、僕からは何日か考えてひとつだけ思いついた理由があるので話したいと思います。

彼にはひとつ特殊能力があります。それは「変わらずになんかいつもそこにいる」という特殊能力です。

たとえば過去10年間を振り返ると、人は変わってしまったり、風のように過ぎ去って、気づいたらいなくなってしまう、といったことがありました。*9 京都の街もずいぶん変わってしまいました。

それなのに、パスタ君だけは驚くほど変わってません。 当然質量や見た目など物理的な性質に関しては大きく変わったと言わざるを得ないですが、話すことであるとか、振る舞いであるとか、やってることとかはなにも変わっていないように感じます。

そして、なんかいつもそこにいます。

大学時代、京都にいたときの飲み会でもパスタ君は当然のようにいつも飲み会にいましたし、僕が京都から東京に移ってきた後でも、飲みにいくと大体そこにいるような感触があります。 毎回別に大した話はしないのですが、なんかそこにいることは覚えてる。 コミュニティや人の集まりを大事にして、見守るような彼の姿勢が現れているのかもしれません。

特別な能力のようには思いませんが、彼以外に常にこの力を発揮できている人は意外にもいません。 僕個人の思いとしては、次の10年も「変わらずなんかそこにいる」人であってほしいと思っています。

最後に、僕が誕生日に言われて一番嬉しかった言葉を贈りたいと思います。パスタ君、生まれてきてくれてありがとう

そして、30才誕生日おめでとうございます。


*1:参加者は行き先不明のバスに乗り、着いた先は pastak が好きなサッカーチーム京都サンガのスタジアムのVIPラウンジだった

*2:京都大学オープンキャンパス 2009

*3:91世代は1991年前後生まれのデジタルネイティブな中高生が集まっていたインターネット上のコミュニティ。プログラミング等の話題を中心に繋がる場所だった。

*4:京都大学工学部情報学科

*5:京大マイコンクラブ (KMC)

*6:Hatena と Nota という会社でインターン・アルバイト

*7:DEN-ENはかつて京都に存在したビアホール。10名以上で突然行っても席が大抵空いていて、フライドポテトとタワービールが迎えてくれた。

*8:鴨川ビールは、京都鴨川の河原で不定期に開催されていた飲み会。知り合いと知り合いの知り合いが集まり、蒸し暑い夏でも吹雪で凍える冬でも開催されていた。

*9:このスピーチの準備をしているときに、カメラロールを10年分くらい遡って見ていた。あの頃一緒に川原で飲んでいた人達の一部は気づいたらいなくなっていた。家族ができた人、遠くに行ってしまった人、人間関係がおかしくなった人、精神病院にいる人、なんとなくいなくなった人。