北欧、動き回る

初めての北欧、デンマークノルウェーに行った。

今回の旅のテーマの1つは前に話したように「北極に行く」ことだった。それが大きなテーマだったけど、もう1つのテーマは北欧を存分に味わうことだった。

旅にはテーマが必要だ。テーマがなければ、観光ガイドブックをベッドの上で読んでいるのと変わらない。旅というのは、見たいものを見て、食べたいものを食べて、はじめて価値が出てくる。

僕は計画をするのはとても苦手でほぼしないけど、テーマはある程度決めて旅行に挑んでいる。

今回は小さなテーマがいくつかあった。 フィヨルドを見ること、デンマーク家具を見ること、カフェでなんとなく時間を過ごすこと、ヒュッゲを体感すること、それが北欧でやりたいことだった。

比較的自由が効くとは言え、一応社会人で、仕事をサボって何週間もフラフラできるような身分でもないから、限られた時間で見たいものを見る必要があった。

旅の期間は10日間で、そのうち何日かはリモートで仕事をしなきゃいけなかった。

旅の計画

土曜の昼を潰し、旅程を考えた。

まずデンマークコペンハーゲンに行く。コペンハーゲンから始めるのは、たまたまマイルで 東京 ↔ コペンハーゲン の直行便がとれたからだった。

それからノルウェー・ベルゲンに飛ぶ。鉄道・フェリーを利用して、フィヨルドを見つつ、オスロまで鉄道で移動する。

オスロで仕事をいくつか片付ける。そして、ロングイェールビーンに行く。なんとかしてコペンハーゲンに戻る。

地図に描くとこんな風になる。ロングイェールビーンはあまりに北にあるので地図に収まらない。

デンマークコペンハーゲン

東京を出発した飛行機はロシアとアラスカの真ん中を通る孤の上を飛び、デンマークコペンハーゲンに着いた。

スカンディナビア航空の機内食で出てくるパンがモチモチで美味しい。客室乗務員も優しいおばちゃんとおじいちゃんという感じで、居心地が良かった。

コーラ500円の衝撃

コペンハーゲン空港到着後、街中に移動した。なんとなくセブンイレブンに入ったところ、ペットボトルのコーラ1本が約500円して衝撃を受けた。

はじめは、見間違いか、為替レートの計算間違いか、と思った。何度見てもコーラは500円(26デンマーククローネ)した。

Twitter にも書いたけど、ハンマーで頭を殴られたような衝撃だった。物価の暴力を感じた瞬間だった。物価が高いとは聞いていたけど、ここまでとは思っていなかった。

なんでこんなに高いのか?

円安、インフレ、そもそも物価が高い、消費税が高い、などあるが、答えはその全部だ。そのすべての要素が積み重なって、1本500円のコーラとしてエッフェル塔みたいにそびえ立っている。当然スーパーに行くとセブンイレブンよりかは安いが、それでも400円近くする。

コーラだけじゃなくて、ビールも高いし、サンドイッチも高いし、宿泊費も当然高かった。デンマークだけでなく、ノルウェーでも物価は高かった。

しかし、呼ばれてもないのに勝手に他人の国に来て、物価が高いだのどうのこうの言うのは良くない。僕たちはあくまで国に入れてもらって、お金とビールを交換させて頂いている立場だ。

そう信じこんでからは、価格を受け入れるのが少し楽になった。

しかし、フードコートでオープンサンドとワインを頼んだだけで3000円はするし、朝にカフェでアボカドトーストとコーヒーを食べただけでも3000円はする。ビール1杯でも1500円する。痛みを感じなくなるまでには少し時間がかかる。

スモーブローと白ワイン

超豊かな田舎町

コペンハーゲンと聞いて、モダンな大都市を想像していたのだけど、実際街づくりを見てると田舎町というような雰囲気がする。

街の作り方や土地の使い方にゆとりがある。どの道路もとにかく広いし、自転車レーンもついている。

街中の広告の類が少なくて、町中なのに景観がなんというか田園っぽい感じに見える。

自転車がとても多くて、学生時代に住んでいた京都、特に大学周辺の交差点を思い出した。

自転車フレンドリーの街と聞くと、住みやすいイメージがあるけど、実際道を歩いているとあまりに自転車の通行量が多くて圧倒される。タイやベトナムのオートバイの大群ほどではないけど、それに近いものを感じる。

田舎町ではあるけど、やはり先進的で豊かさを感じる。いたるところで無人化・機械化が徹底している。

地下鉄の電車には車掌も運転手もいない。駅にも駅員はいなかった。

完全に人がゼロにできないような部分でも、パワフルな機械を活用して少人数で回す仕組みをつくっているように見えた。

たとえば、空港の手荷物検査レーンで、日本や他の国だと2人か3人で対応しているような検査でも、1人で対応できるようにデジタルディスプレイでの案内表示をうまく作ったりしている。

キャッシュレス決済も当然進んでいて、滞在中は1クローネも現金を使わずすべてカードで支払いができた。

あと、街中がなぜかとても静かだったりする。地下鉄に乗っていて、乗っている途中の音がとても静かで驚いた。機械の静音性をすごく重視して運用しているように感じる。

パン屋でももちろんカードで支払える

勝手にヒュッゲ

どこに行っても優しい雰囲気の椅子・テーブル・ソファがあるのがちょっと嬉しい。

細かい箇所に小さな喜びを感じられる体験が多かった。彼らにとっては当然で喜びですらないのかもしれないけど、勝手にこれがヒュッゲ(生活のなかの小さな喜び)だと思うことにした。

まず驚くのはベーカリーのパンがどこも美味しい。セブンイレブンのパンですら美味しそうに並べられている。

セブンイレブン パンコーナー

どんな場面でもモチモチのパンを出さなきゃ失礼だと思っているのだろうか、どんなお店でもモチモチのパンが出てくる。

コーヒーも総じて美味しい。ベーカリーでついでだから頼んだコーヒーですら、しっかりちゃんと香り高い。北欧は別にコーヒー豆の産地でもなんでもないわけで、素材にはそれほど不利な点はないはずだから、日本でももっと頑張れるよな、と思った。

ノルウェー・ベルゲン

コペンハーゲンを何泊か楽しんだあとは、フライトでノルウェー・ベルゲンに移動する。

ベルゲンは観光都市にしてノルウェー第2の大都市なはずだけど、こじんまりしていて、多少豊かで綺麗な港町という雰囲気がある。

街の中心部はかなりコンパクトで、見どころはすぐに回り切ってしまう。港を一通り歩いたあと、市場ででかいサーモンを見学したりした。でかい魚を見るといつだって元気な気持ちになれる。

仲間と一緒にテラス席でビールを飲みつつゆっくりするような楽しみ方をしている人々が多かった。

一人だと特にやりたいこともなかったので、緊急トレッキングをすることにした。山の上までいく電車もあるけど、ノルウェーの森に興味があったので、自分の足で山を登ってみることにする。

道があまりよくわからなかったけど、整備された坂をひたすらに登りまくった。高台まで登ったけど、景色は思ったよりも平凡で、特に印象に残っていない。

よくわからないまま歩いていると、最終的に美しい静かな湖に到着した。夢みたいな湖だった。理想的な風景を見ると、「夢みたいな」という表現ばかり使ってしまうけど、本当に夢みたいな湖だった。家族が湖で泳いでいて、素晴らしい休日を過ごしていた。

フィヨルドの質量

ベルゲンには1泊だけしてソグネフィヨルド観光に行く。

旅程を考えるとき、モデルコースを参考にする。参考にした上で、何泊とか過ごす時間に関する部分は無視している。「2泊3日は必要」と書いている場合には、1泊だけにする。そうじゃないと、退屈してしまう。動き続けないとそこでゲームオーバーだ。

早朝にベルゲンの駅から鉄道に乗って、ソグネフィヨルドを眺める旅に出る。

チケットは、鉄道・バス・フェリーがセットになったパッケージをオンラインで購入していた。

鉄道とバスに乗って山の中の小さな町に移動し、そこからフェリーに乗ってまた小さな町に移動する。

静かな水面と壁みたいな山をずっと見ているだけで楽しい気持ちになる。移動時間は長かったけど、現実感のない景色に圧倒されて飽きが来なかった。

電車の窓から見た水面がとても静かで、鏡のように岩山を反射していて、それがとても綺麗だった。

高校生のとき、地理の教科書で見ていた景色が、目の前に360度、空間として広がっていた。本物のフィヨルドは、知識として知っていたよりも大きくて、存在感、質量感もとても大きかった。地球のものというより、小惑星か違う惑星の岩のようにも見えてくる。

朝から動き回り、フェリーがまた小さな町に着いたあと、眠さが限界になって昼寝をしていた。緑色の生きた芝生の上で、夢みたいな昼寝をした。

ベルゲン鉄道

ベルゲン鉄道に乗って山を降りる。ベルゲン鉄道は世界一美しい鉄道とも言われるらしい。オレンジ色の車内の窓から山々の景色をぼんやり眺めていたのを覚えている。夢みたいな昼寝をしたあとだから記憶がぼんやりしている。

列車は停まって、至近距離に滝が現れる。音楽とともに、女性ダンサーによる謎のダンスパフォーマンスがはじまる。

ベルゲン鉄道 車内

町なのかすらよくわからない山の谷間の駅で乗り換えて、オスロに行く。

ノルウェーの半島の山を横切るようにして、進んでいく。凍った湖と赤い小屋が見えた。

オスロその後

オスロでは朝、シナモンロールとコーヒーを飲んで、ノートパソコンで仕事をして、仕事が終わったら散歩をするような日を何日か送った。仕事が終わったあとの時間も明るいのは嬉しい。

街を歩くだけで、それといって観光はしていないけど、ノルウェー国立博物館には行った。

食べ物はサーモンとイモ、 飲み物はアクアヴィットを飲んだ。食べ物はサーモン以外はこれといったものはないが、サーモンが美味しければ文句は言えない。

オスロはコンパクトながらモダンで建物が多くて、居心地の良い都市だった。機会があればまた少し長く過ごしたいなと思った。

オスロ・オペラハウス

前回の記事にも書いたように、オスロからはロングイェールビーンに向かった。

uiuret.hatenablog.com

ロングイェールビーンを深夜にでて、オスロでトランジットして、またストックホルムでトランジットして、コペンハーゲンに戻った。

コペンハーゲンでは、最後の夜なので、クラフトビールを飲みに行った。夜といっても、真昼のように明るかった。

旅の終わり

今回の旅のテーマについては、一通り見て感じることができたから満足感がある。限られた時間の中で動き回ることができたのも嬉しい。

当然、すべての観光ができたわけではない。けど、旅行先では見たい場所が少し残ってるくらいがちょうど良かったりする。完全にすべてを見てしまうと、次に来る理由がなくなってしまうからだ。ノルウェーでもデンマークでも見残したものはあり、もっと見てみたいものがまだある。それくらいがちょうどいいと思う。

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