ドイツのクリスマスマーケットに行く

本当は、冬はさむいから旅行をしたくない。ただ今回は年末の一時帰国が近づいているのもあり、その前にそろそろ他の国に旅をしておきたいなと思った。

寒さを覚悟して旅に出ることにする。

ドイツに行こうと思ったのは、実のところ消極的な理由で、ヨーロッパの大きめの国の中で単にこれまで行ったことがないというのが動機だった。 フランス・スペイン・イタリアなどの観光資源がいくらでもある国と比べると、ドイツは観光としては優先順位が下がりやすく、興味はあったものの訪れるチャンスがなかった。

オンライン英会話で東南アジア放浪中のイギリス人に相談したところ、「今の季節は〜ドイツはクリスマスマーケットがあって楽しいしまじおすすめ」と言われて、興味がさらにでてきて行くことに決めた。

ドイツの中でも以前からケルンの大聖堂に興味があったので、ケルンを最終目的地として目指すことにして、フランクフルトにも空港の交通面の都合で寄ってみることにした。

航空券は1週間前くらいにとって、ロンドンとフランクフルト往復で150ポンド程度(約3万円)だった。時間は飛行機で2時間弱。東京からで例えるなら、週末の北海道か福岡旅行のような気軽さで他の欧州の国に行けるのはとても嬉しい。

安い航空券をとった都合で4泊5日になったんだけど、実質観光したのは金土日の3日間の旅。一緒に来ている会社の同僚を誘って2人旅。

ドイツ料理の美味しさ

ロンドンのヒースロー空港から飛んで、フランクフルト空港に着いた。鉄道に乗ってホテルのあるフランクフルト中央駅に移動する。

夜にホテル近くのドイツ料理レストランに行く。長野県のスキー場にあるレストランのようななんとなく馴染みのある洋風の内装。ピルスナービール、シュニッツェル、ソーセージなどを頼む。

どれもわかりやすい味付けでシンプルに美味しい。初めての本場のドイツ料理だったが、味のないイギリス料理との格の違いを感じる。

ちゃんと味のある料理を出せる国は素晴らしい。ドイツの国力の高さを感じる。ドイツ料理とビールに関しては、滞在中一度も期待を裏切られることはなかった。

金融都市フランクフルト

翌日、街を散策する。

フランクフルトは都市としては人口70万人程度でそれほど大きい街ではないけど、金融都市として発達していて、欧州中央銀行や各国の金融系企業が集まっている。

いかにも金融の人が好きそうな高層オフィスビルが街にちらほら建っている。香港シンガポールのような過密都市なら高層ビルをぎっちり並べたくなる気持ちはわかるけど、フランクフルトのようなちょっとしょぼめで土地も余りがちな街でわざわざ高層ビルを建てる必要があるのかは謎である。

ユーロのシンボルモニュメントを見る。

フランクフルトのクリスマスマーケット

街散策して午後、クリスマスマーケットに行く。規模としては大きめで街中でクリスマスマーケットの屋台が展開されているような感じになっている。 クリスマス系のイベントには期待したことは少ないんだけど、色々な屋台があってどれも暖かい雰囲気でキラキラしてて、これはとても楽しい。

ホットワインを飲む。ワイン自体は6ユーロなのだけど、最初に10ユーロ払ってあとでコップを返すと4ユーロが返ってくる仕組み。クリスマス仕様のコップになってて、とても可愛い。このコップは返さずに持って帰ってもいい。

冬の寒さの中で温かくて甘いワインを飲むと、身体も温まって嬉しい。スパイスの香りも心地いい。意外とアルコール分が濃くて酔いがすぐに酔いが回ってきそうになる。

中心地から川までクリスマスマーケットが続いていて、川と橋の雰囲気も素敵だった。

ケルンの大聖堂

フランクフルト中央駅から新幹線で1時間ほどでケルンに着いた。ケルンの駅に着くと、すぐに目の前に大聖堂が現れる。

天空を突き刺すような塔が尖った建築になっている。たぶんだけど、塔の先端部分は天国に到達していると思う。建物の表面部分のディテールも緻密で、深さと繊細さ両方を同時に感じる。これまで見たキリスト教の教会の中でも1番2番を争うくらいすごいと思った。同じレベルの感動をしたのは、スペインのバルセロナで見たサグラダファミリア以来。

大聖堂の中も衝撃的に美しかった。柱が空間を縦方向に切り出して、空間自体が彫刻になっている。

ケルンのクリスマスマーケット

夜にクリスマスマーケットに行く。ケルンの中でもクリスマスマーケットはいくつかやっているみたいなのだが、ケルンの大聖堂前でやっているのが人気だと聞いて来た。

マーケットの広さだけでいうとフランクフルトよりも小さかったけれど、雰囲気の良さはケルンのほうが格段に上だったと感じた。クリスマスツリー、イルミネーション、微かに光る大聖堂、が合わさって雰囲気がとても良い。

ホットワインが大好きになったので、ホットワインをまた飲む。このコップはロンドンの家まで持って帰った。

ホットワインを啜っていたところ、ケルン在住のメキシコ人親子に話しかけられて仲良くなった。一応宗教行事だから静かにほんわか過ごすような雰囲気なのだと想像していたけど、場の雰囲気は盛り上がっていて飲み騒ぎに近い。日本のお祭と同じだった。

ホットワインの濃い酒を何杯も飲んで、陽気になって騒いでいる若者達もいる。お酒を飲みながら陽気に仲良くなれたのは良い誤算だった。

旅の終わり

週末が終わり、飛行機で2時間爆睡してロンドンの家に帰ってきた。今回の旅で、ドイツが好きになったしクリスマスも好きになった。

旅ってのは、先入観をできるだけ捨てて念のため一度見に行くくらいのほうが良いよなぁと感じる。ちょっとネガティブなイメージを持っていても、行ってみると意外と問題にならなかったり、思ったよりも面白いことが多々ある。実地に行かないと気づけない。

そんなに遠くないのなら、行ってみたほうがいい。何もしない週末よりは良い時間を過ごせる。

ロンドン日記 寒い日に鍋をやる

寒い一週間があった。気温が急に下がって、朝起きたら-1℃でベッドから出られないような日もあった。

あまりに寒くて、日本の鍋料理が恋しくなったので、鍋をやることにした。

問題は、イギリス普通のスーパーには日本の鍋に使うようなスープや野菜は売ってないことで、なんとかして材料を手にいれないといけない。

たとえば、白菜は売ってないし、意外なところで言うと豚肉の薄切りも売ってない。アジア人が当たり前とするようなものも、西洋にはないことがある。

ロンドンは素晴らしい都市で、アジア系スーパーがその辺にいくつもある。ただし、中華系や韓国系などがあり、それぞれ微妙に品揃えが違う。店によっては、イメージ通りのほしいものが手に入らなかったりする。

家のすぐ近くに綺麗な韓国系スーパーがあるんだけど、辛ラーメンやキムチの品揃えは良い一方で、味噌汁のちょうどいい味噌や豆腐が手に入らないことがあったりした。


色々探し回った結果、家から一駅離れた場所に日本食スーパーがあるのを発見した。

実際に行ってみると、日本の家庭料理の自炊で必要なものはほぼ全てここで手に入ることがわかった。店のロゴに「とにかく最高」と書いてあるが、間違いない。

この発見は、ポルトガルヴァスコ・ダ・ガマがインド航路を見つけたのに匹敵するといってもいい。僕の食生活から、アジアのすべての食への道が切り拓かれた。

とにかく最高

戦利品

その他の材料を集めるのに、中華系や韓国系スーパーも利用したのだけど、ほしい野菜の英語名がわからなくて苦労した。

たとえば、白菜は Chinese cabbages だったり、ニラは Garlic chives だったりする。どんな難しい受験用の英単語帳にも載ってないと思う。TOEICで何点とろうが、野菜の名前すらわからない。

ちなみに、エノキは Enoki mushrooms で、西洋世界からすると未知のきのこだったことがわかる。

中華系スーパーで買った白菜。オランダで作っているらしい。


第一弾は、キムチ鍋の素で作ったのだけど、とても美味しくできた。

日本食スーパーで買った豆腐が良い仕事をしている。日本で作るのとまったく同じ美味しさのものができた。イギリスの惨めなほど寒い日にこんなに美味しい鍋が食べれると満足感がとてもある。

かかったお金はどれくらいかと言うと、覚えている範囲で、鍋の素が4 ポンド(≒800円)で、白菜が 3ポンド(≒600円)だった。日本の基準からすると値段が2倍くらいはして高く思えるけど、ほぼ常に日本の2倍するロンドンの物価を考えると、そんなに高くはない。

お金があれば普通に生活ができる。それがわかって有意義な日だった。

イギリス運転免許証を手に入れた

イギリスに住所があると、日本の運転免許証をイギリスの運転免許証に切り替えることができる。郵送で手続きするだけで現地の運転免許証が手に入る。特に試験などもない。

手続き時には日本の運転免許証をイギリスの運転免許センターに送らないといけないのだけど、最終的には日本の運転免許証も返却されることが多いので、日本の免許を維持したままイギリス免許を追加でゲットできることになる。

日本運転免許と国際免許があれば運転したいような国ではほぼどこでも運転できるから、免許としてのメリットは少ないのだけど、身分証として使えるのが大きい。世界に共通して言えることだけど、身分証は何枚あってもいい。

というわけで、切り替え手続きをしてイギリスの運転免許証を手に入れた。

具体的な手続きは大使館の情報や他のブログ記事に詳しいのであえて書かないんだけど、Post office と何度か往復し必要な書類を揃えて日本の運転免許証と共に郵送をした。

証明写真機で写真を撮ったり、郵便の手形を買うためにポンド現金を用意したり、ほんとにこれでいいのか不安になりながら申し込み用紙に記入したり、細かい面倒はあったけどまぁなんとかなった。

www.uk.emb-japan.go.jp

申し込みの郵送をしてから2週間くらいで運転免許証は届いた。

ちょっと面白いところで言うと、写真はモノクロで、透かしがオリジナルで顔写真になっている。


現地運転免許証を手に入れた結果でいうと、年齢確認にとても便利でよかった。

イギリスでは年齢確認される機会がとても多い。包丁を買うのにも年齢確認が必要だったり、噂によるとレッドブルエナジードリンクを買うのにも年齢確認される。料理ハサミを買うのにもIDが必要で、パスポートを携帯してなくて買えないことが最初あった。

身分証については、イギリスに来た当初から困っていた。元々はビザ証明用のカードがあったらしいが、僕が来た時点では eVisa という仕組みに移行されていて、ログインするとWebサイトでビザの内容が見れるというだけで身分証として使えるようなカードがもらえない。*1

常日頃から持ち歩くにはパスポートは分厚くて面倒で、失くすと困るので神経がキリキリしていた。持ち運ぶたびにパスポートがボロボロになってくのも気になる。

パブでビールを飲もうとすると2回に1回くらいはIDを求められる。コートの内ポケットから運転免許証を取り出して見せるだけで済むのでとても楽だし、泥酔してパスポートを紛失する恐怖を感じることもない。というか僕はもう32才なんだけど、いつまで年齢確認されるんだろうか。


申請してから一ヶ月くらい経つが、送った日本の運転免許証はまだ返ってきていない。今、とても不安な状態にある。

普通こういうブログを書くときは「返ってくるか不安だけど、ちゃんと返ってきて良かったです」みたいなハッピーエンドで締めくくるのが筋だとは思うんだけど、やっぱり人生って不安な状態でいる時間のほうが長いからそういう時間のことをちゃんと書いておきたい。

宙ぶらりんな気持ちを落ち着けるときにこそ文章は役に立つ。

*1:入国時も自動改札ゲートにパスポートをかざすだけで入国できて、ビザの確認をされるような機会もなくてびっくりした。あれだけ頑張ってビザの準備したんだから、見せびらかす機会がむしろほしい。

ロンドン日記 再びお湯が出なくなる

ロンドン在住の日本人エンジニアが集まるミートアップに行ってきた。僕もちょっとだけ発表をした。ミートアップの後、皆でパブに行き、少なくとも2パイントのビールを飲んだ。自分の意思を持ってイギリスで生活をしている人ばかりで、なかなか刺激的な会だった。

会場のあったロンドンの東側から、住んでいる西側まで tube (地下鉄)に乗って「良い会だったな」と余韻に浸りながら家に帰った。

夜も遅いしすぐ寝ようと思って、シャワーを浴びようとしたらお湯が出ない。どの蛇口をどうひねっても冷たい水がでてくる。お湯が出ないのは実はこれで2回目だ。1回目は入居初日だった。冷たい水で頭を洗ってとてもみじめな気持ちになった。

2回目になると意外にも落ち着きがある。「まぁそういうこともあるだろうな」「明日普通にお湯出てくる可能性もある」と思って、その日は寝た。


翌日朝起きて再度チェックして設定も弄り倒してみたが、一切お湯が出ない。ボイラーのマニュアルをダウンロードして、一通り仕組みを把握してみて再起動してみたりしたけど、ぜんぜん何も良くならない。

昨晩シャワーを浴びれなかったから頭がむずむずする。仕方なく電子ケトルでお湯を沸かして、そのお湯を浴びた。初回よりも良くなった点としては、キッチン用のボウルを桶として使えるようになったことで、これで電子ケトルの1L程度の容量を超える湯を浴びることが可能になった。ボウルでお湯を配合することで、熱湯ではなくちょうど良い温度の湯を浴びることができる。お湯の量はそれでも足りなくて身体は冷えたままだったけど、前回より進歩は感じる。

どうしようもないので、大家であるところのランドロードに連絡するのだけど、問題は僕のランドロードは土日休みなことだ。お湯が出なくなったのが金曜夜で、僕の物件は不動産会社が管理していて、出勤日の月曜になるまで返信がこない。そこから業者に修理をしてもらうとなると一週間以上お湯なしの生活を覚悟しないといけない。しかも今週から急に気温が下がりロンドンは本格的に冬に入るタイミングだった。

こういうときすごく不安な気持ちになる。メンタルの状態が二段階か三段階下がったようで、物事を前向きに考えられなくなった。旅先のインドでホテルに一方的に直前でキャンセルされたときと同等かそれ以上に心細い。この日は色々イヤになって、普段食べない辛ラーメンを食べた。


日曜はケトルでお湯を浴びて、月曜はジムで生ぬるくて水圧の弱いシャワーを浴びてやり過ごした。

結局のところは、火曜に直ってお湯が出るようになった。月曜にランドロードから返信が届き、業者を手配してくれて、それから火曜に「plumberだ」と水道業者のおじいちゃんが現れて、お湯が沸くようにしてくれた。

ボイラー(湯沸かし器)の安全装置的なものが作動して動かない状態になっていたのだが、リセットボタンを押してとりあえず動くようにしたらしい。また同じことが起こったらどうしたらいい?と聞いたら「電気は危ないから絶対に自分で触っちゃダメだ、俺に連絡しろ」と言われる。

温かいシャワーが浴びれるようになると、それまでの不安が嘘だったみたいに安心した。非文明から文明に戻ったような感じがする。

日本で暮らしていたとき、お湯が出なくなったことは一度もないだけど、今となってはそのことが不思議に感じられる。

ロンドン日記 夜やることがない

ロンドンに来てから、夜やることがない。

大人として「やることがない」とはっきり言うのは勇気がいる行為でもある。それでも悔いのないように正直に言うと夜とにかくやることがない。

平日の夜は特にやることがない。日本時間に合わせて仕事しているというのもあって、朝7時から仕事を始めて、夕方17時には仕事が終わる。それから家で晩ごはんを食べるのだけど、18時頃にはやることがなくなっている。

やることがない、という感情を味わうのは小学校の学級閉鎖のとき以来かもしれない。頭がぽっかり空いたような感覚がある。

スペインに住んでいる知り合いも「友達ができなくて暇だ」とDMで言っていた。職業があり家庭もある大人がわざわざ普段話さない相手にDMを送ってくるくらいだから、よっぽど暇なんだと思う。


ここまでやることがないと、日本では何をしていたのか、なぜやることがあったのか、が疑問になってくる。何日か哲学モードに入ってかなり考えた。 思いついた理由は3つ。

  1. 友達
  2. 外食
  3. SNS

1つめは友達がいたこと。日本では東京に住んでいたわけだけど、自然と友達と遊ぶ機会が発生していた。仕事の知り合いも広義の友達だとすると、会社の仲間と飲みに行ったり、会食に行ったりなど自然と夜を費やす機会があった。

ロンドンでは友達はほぼいない。自然な夜の用事の機会は限られている。

2つめは外食。日本では1人でフラッと入れる飲食店の選択肢が多くて、仕事で疲れたときは特に、気晴らしを兼ねて夜ごはんを食べに行っていた。定食屋さん、ラーメン屋、中華料理屋、インドカレー屋、など最寄り駅周辺だけでもいくつも選択肢があった。夜ごはんを食べに行って帰ってくるだけでも、それなりに何かをやった感があった。

一方、ロンドンではそういう選択肢がかなり少ない。外食の物価が全体的に高いのもあり、一人で行くようなお店が少ない。 ハンバーガーやケバブのようなファストフード店はあるが、なんというかヘビーではあるし、ちゃんとした食事という感じではないので気晴らしにもなりにくい。

3つめはSNS。日本では夜Xだとかインスタだとかが盛り上がるので、眺めたり反応したりして時間を使ってたように思う。

イギリスが夜の時間だと時差的に日本の人達は完全に眠っていて、SNSはまったくと言っていいほど動かなくなる。たとえば、今18時なのだけど、日本は深夜3時でこの時間に起きてる人はまぁほぼいない。ヨーロッパの人をもっとフォローすればいいのかもなと思うけど、むずかしい気もする。


どうしてもやることのない夜は何をしているのかというと、パブでビールを飲むかカジノでポーカーを打って時間を過ごしている。

どっちに行っても夜やることのない男達が集まっていて、仲間がいるようで心が安らぐ。

カンボジア住みのアメリカ人に一時期オンラインで英語で教わっていたが、彼も「Expat は夜は飲むくらいしかやることがない」と言っていたのを思い出した。

そういうものなのかもしれない。

ロンドン日記 生活できる気がしてきた

イギリスに来てから一ヶ月の間、一番の不安は食事だった。毎日何を食べればいいのかわからなくて、モヤモヤする日々が続いていた。

適当に食べたらええやん!と思われるかもしれないが、イギリスの生活では日本のようには簡単にいかない。

まず、独身者第一の選択肢として、スーパーのお弁当・惣菜が思い当たる。Ready to eat と呼ばれる電子レンジでチンすれば食べられるパスタ・カレー・焼きそばのパッケージなどが並んでいる。値段は手頃なのは良いが、基本的に全然美味しくはない。油断して適当に選ぶと、すぐに味のない食べ物に出くわす。

スーパーの ready to eat

この国では、適当に選んでも最低限美味しいものが手に入る、という仮定を置いてはいけない。油断するとマズイものがすぐに出てくる。

じゃあ普通に外食すれば良くない?と思うかもしれないが、そんな簡単にはいかない。一人で入れるような手頃なレストランが少ない。物価が高くて、KFCなどのファストフードでも大体15ポンド(=3000円)くらいはする。少なくとも健康ではないし、毎日食べていると身体が重くなる。

ロンドンは選択肢は多いほうで、丸亀製麺など日本食・アジア系チェーンもあるのだけど、日本人の基準からすると美味しくない。ちなみに、ロンドンにはセブンイレブンなどのコンビニは基本ない。なぜないのかは知らない。

そういう事情があるので、必然的に自炊をすることになる。

自炊をしようと思っても食材をどう選ぶのかわからないので、毎日スーパーに行き何を買って食べればいいのかわからなくて、途方に暮れていた。


今週ようやく食生活にブレイクスルーが訪れた。

ブレイクスルーのきっかけは、炊飯器を買ったこと。これで白ごはんが炊けるようになって、主食が固定された。パンや小麦系を主食にする選択肢はあったのだけど、やはり毎食は慣れないというのもあるし、ごはんのほうが消化に良い気はする。

白ごはんにおかずを追加すれば、ちゃんとした食事感がでて満足感がある。*1塩をかけておにぎりにすれば、空腹を満たす軽い食事としても戦える。

買ったのは YumAsia というヨーロッパでは幅を利かせている謎ブランドの炊飯器。本当は象印など日本メーカーの炊飯器がほしかったのだけど、輸入が必要で価格も高く妥協した。YumAsia の炊飯器は図体がでかい割に3合しか炊けないなどちょっと不満はあるもの、まぁ使える。

「ゆめにしき」というイタリア産コシヒカリAmazon で入手して、YumAsia で炊いて食べている。

醤油など、調味料を手に入れたことも大きい。近所の韓国系スーパーに、キッコーマンの醤油を売っているのを発見して買った。

あとはこういう感じで準備すれば、健康的で満足感の得られる食事が作れるようになった:

  • 鶏の胸肉もしくは鮭を焼く (塩・コショウ、醤油などで味付けをする)
  • ビーリーフ&レタスにトマトを追加してサラダにする (オリーブオイル・粉チーズなどをかける)
  • 白ごはんを炊く

スコットランド産サーモン、野菜、米

鶏の胸肉は柔らかくジューシーで、鮭はふっくらしていて、日本より美味しい気がしている。

イギリスのスーパーにはランクがあり品質に大きな差があるので、オリーブオイル・粉チーズなどレバレッジが効くものには惜しみなく金を使い M&SやWaitrose など上位ランクスーパーで買うようにしている。

食事面が整ってきて、この一週間で急に生活ができるような気がしてきた。

*1:「食後の満足感」が生活にとって重要な要素なのはイギリスで味気ない食事を経験してから気づいた。当然としているものを失ったとき、人ははじめて感謝をできる。

ロンドン日記 ドアの修理がきて、ドアが消えた

イギリスでは大家のことをランドロードと言う。

僕の部屋のランドロードは個人ではなく会社で、会社が建物ごと所有してメンテしながらそれぞれの階の部屋を貸し出している。元は会社名の Music なんとか Company から察するに、地元のレコードショップが不動産管理に転身した感じのようだった。

入居後、ランドロード側担当のメールアドレスをもらった。やはりというか問題が何個もあって、あまり期待はしてないけどダメ元で以下の問題についてメールを送ってみた:

  1. 廊下のライトがつかない
  2. バスルームのドアの塗装がひび割れている
  3. レセプションルーム*1のドアの下に大きい隙間があり、冷たい空気が容赦なく居室に入り込み、寒い

左から問題1, 問題2, 問題3

3に関しては、イギリス在住の知人に相談してみたが何もしてくれないケースが多いらしいので期待薄だけど一応含めておいた。1と2が解決すればいいかなという期待感。


翌週月曜、担当から返信が来た。
「今日 builders を家に行かせる、それでいいか?」
平日で仕事があるのに突然すぎて困ったけど、話が早いのは嫌いじゃない、OKだ。

数時間後、インターホンが鳴る。ジーと渋めの蝉みたいなブザー音が部屋に響く。

“It’s the builders.” これ以上なく端的かつ簡潔に名乗って男達がやってきた。

白人と黒人の若者二人組で、プルオーバーフーディにジーンズを履いている。見た目は完全にその辺でスケボーで遊んでる若者。

下見に来た感じかと思いきや、その日すべての問題を無料で直してくれるらしい。

まず問題1、廊下のライトは単に電球が切れていたので取り替えてくれた。問題2、ひび割れている部分をペンキで塗り直してくれるらしい。問題3、あまり説明はなかったのだが、とりあえずドアを外に持っていって直してくるらしい。

ということで、レセプションルームのドアはいきなり取り外されて消えた。

結局、この日はドアが帰ってこなかった。「19時だから営業時間終了だ、ドアのペンキが乾かなかったから明日朝持ってくるぜ」とのこと。 「また明日な Have a nice day」と言って帰っていった。夜、ドアがなくて寒かった。この夜ほどこれまでの人生で接したすべてのドアに感謝した日はない。

バスルームのドアの塗り直しも塗り直したのはいいが、光沢のある塗料を塗ったせいで、色にムラができてダサくなった。また明日塗り直すらしい。最初からなぜそれを考慮しなかったのは謎だが、フィードバックを見て改善していく姿勢は嫌いじゃない。


2日目。約束の朝にはやってこず、二人組は14時にやってきた。ドアがやっと帰ってきた。ドアの長さを拡張してくれたらしい。

ドアを元の場所に固定してくれたのだが、ドアの下にまだ隙間がある。「まだ隙間があるな」「長さが足りねぇな」「他の部屋のドアとは床の高さが違ったんだな」と二人組は話している。最初になぜ測らなかったかは謎。よく見ると拡張した部分も欠けている。

ドアの足りない長さ分は、隙間風防止のブラシを取り付けるという話になった。

「明日か明後日来るぜ Have a nice day」と言って若者は帰っていった。その夜はドアがあるので昨日よりは寒くなかった。


3日目。ヤツらは来なかった。


4日目。白人の若者、一人でやってきた。

ペンキ塗りをはじめ、せっせと作業を進める。「音楽を静かにかけていいか?」 と聞かれた。作業を進めてくれるなら問題ないOKだ。最初は気を遣ってくれてるようだったが、次第に音量が増していき、スマホのMAXくらいの音量になる。シューゲイザーロックで音楽のセンスは良かったので許す。

最終的にはドアがピカピカの白になって、ブラシを装着してくれて、隙間風もほぼなくなった。


今回の体験からの学びは、1つめは、言ってみると意外と対応してくれることがある、ということ。言ってみるのは無料なので、なんでも言ってみたほうがいい。

2つめは、期待値をできるだけ低く持っておくほうが幸せに生きられる(特にイギリスでは)、ということ。仕事でも人生でもそうだけど、期待しすぎるとがっかりしてしまいエネルギーを消耗する。今回はまったく期待してなかったので、思ったよりも満足感が高い。