オンライン会議では人と被って話してもいい

意外と気づかれてないかもしれないけど、Zoom や Google Meet などでのオンラインミーティングでは人が発言している途中で話してもいい。

なぜかというと、オンラインで通話するとき、参加者はほとんどの場合イヤホンを装着していて音が干渉しにくいので、同時に被せて発言しても聞き取ることができるからだ。
多人数での場合は発言者以外は聞き取りにくいケースも当然あるけど、少なくとも1対1で話しているときには被せて話していい。

質問の途中で話しまくる

このことに気づいて以来、質問の途中でフルセンテンスが明確に予測できる場合は、相手が発言している途中でもこちらから回答を話しまくっている。
音声通話では、考えながら話す上に丁寧であることを求められることがあるので、書き言葉と違って無駄な言葉が多く冗長なことが多い。

たとえば、文脈として確認事項があったとすると「XXの点についてですが、この点は御社…」という時点で「この点は御社側としては問題ないでしょうか?」と予測できるので、途中で「問題ないです」と答えることができる。

特にインターネット回線が悪く遅れがある場合、相手の質問のフルセンテンスを聞き取り終わるのを待っていると、コミュニケーションに時間がかかる。単に待つことをやめることによって、時間を節約できる。

失礼なのでは問題

相手が話している途中で発言するのは失礼なのではないか?」と思うかもしれないけど、個人的には相手の時間を無駄に奪うほうが失礼だと思っている。

ちなみに、意図せず相手と話しているのが被ったときには気まずく思う必要はない。インターネットやシステムの事情で起こりうるから、人間の問題ではなくシステム側が悪い。
気まずく思う必要はまったくない。

広まってほしい

仕事で外部の人々とオンラインで話す機会が増えたので、このことが広まってほしいと思って書いた。

僕と通話する機会があれば、どんどん話している途中で遮って発言してください。

2022年 強さへの旅

2021年に続いて、この1年間でやってきた訓練について振り返りたいと思う。

uiuret.hatenablog.com

2022年は継続性がテーマだった。2021年で獲得した習慣を継続していき拡大していくかを意識して取り組んでいた。

運動

2022年一番成功だった投資は、間違いなくパーソナルトレーニングだと思う。

昨年でジムに通う習慣ができたので、今年はその活動を拡大してフリーウェイトを使った筋トレを実験的にやってみることにした。最初に正しいフォームを習うのが重要だと聞いていたので、パーソナルトレーナーを雇うことにした。Googleマップで近場のパーソナルジムを探して、週2回、1ヶ月ほど通った。

やってみる前は、筋トレなんてのはゴリラになりたい人がやるものだと思っていた。僕みたいな一日中パソコンをペタペタ触るだけが仕事の人間が、発達した胸筋を持つ意味なんてあるか? そう思っていた。

実際やってみると、筋トレは理解し難いほどに強力で、効果的だった。特にバーベルを使うウェイトリフティングは強烈な体験だった。身体面とメンタル面両方に効果があった。

まず、高強度のトレーニングは時間効率が良い。短い時間で、確実に筋肉に刺激を加えることができる。

もう一つ、ストレスや不安を吹き飛ばすことができる。生きているとどうしようもなく不安がやってくる。朝起きた途端から不安に包まれていて弱々な自分になってる日もある。そういうときにジムに行って重りを上下させる運動をやるだけで、不安の一部が空気中に溶けて消えていく。

パーソナルトレーニングで筋トレのやり方をインストールしてもらって以来、週3回ジムに行き、重りを上げ下げし、プロテインを飲む生活を続けている。月曜・木曜・土曜の朝ジムが開くのと同じ時間に行く習慣にしている。

最初に比べれば、ずいぶん身体も変わってきた。見た目がすごく変わったというほどではないけど、身体の変化に自分ではかなり満足感がある。旅行で重い荷物を持って動き回っても疲れにくくなったりなどの効果も感じる。

ただ、メインの効果はメンタル面の安定だと思う。当然不安でどうしようもなくなったり、心が弱々になったりすることはあるけれど、頻度は減ってきた。仕組みは一切わからないけど、理解し難いくらいの効果がある。

計測が大切なので、3ヶ月に1回 in body という体重計で筋肉量や体脂肪量などを計測するようにしている。Google カレンダーに計測日を登録してその日に計測している。

今年一番嬉しかったのは、生まれて初めて懸垂ができるようになったことかもしれない。

パーソナルトレーナーに教わって「やってみたらできた」という感じなんだけど、それでもまるで背中に翼が生えて飛べるようになったような感覚があった。以前の自分よりももっと自由になれた感覚。はじめて自転車に一人で乗れたときの感覚に近いかもしれない。

英語

スピーキングを中心に強化していた。今年は、思ったことを話せないもどかしさをなんとかしたい思いが強かった。

練習方法は以下の記事に書いた通りで、ここからはほぼ変わってない。徹底的な反復練習 + そのための素材を小さな労力で作るシステムのセットで運用をしている。

uiuret.hatenablog.com

今年はそれに加えてオンライン英会話をやった。昨年やった時間も含まれているけど、トータルプレイ時間は10000分を超えたくらい。DMM英会話のネイティブプランで東南アジア在住のアメリカ人達と話し続けた。

スピーキングがむずかしいのは、一定のレベルを超えると、成長の停滞が長く感じられる期間がやってくることだと思う。

停滞したモチベーションの低下を感じたときには、逆に投入時間量を増やす作戦が効いた。具体的には、1日25分 を 1日25分 x 2コマ に増やした。そうすると、成長を感じるまで時間が短くなって、モチベーションが高まり継続がかなりしやすくなる。停滞しているように感じているだけで、実際には経験値は蓄積されていてレベルアップまでに時間がかかっているだけなので、シンプルに練習量を倍にするとレベルアップが早くなる。

思ったことを英語で自由に流動的に話せる、といった感じのレベルには到達できてないけど、話すときのスピード感やフルセンテンスで質問に答えるスキルはかなり高まった。

現在、このスピーキングの練習はストップしている状態になっている。数ヶ月前に、それなりの満足感を得てしまってそれから継続しなくてもいいかな、という気持ちになってしまった。またどこかのポイントで再開したい。

昨年に続いて、Anki による英単語暗記も継続していた。今年は1日も欠かさず毎日フラッシュカードの復習をやった。2日欠けてるように見えるのは、海外旅行のときにタイムゾーンが変わった影響。

ある時期は単語集の知らない単語を Anki に毎日突っ込んでやっていたり、他の時期はただ単にWebサイトで知らない単語を見たときに記録していた。

まだ Kindle で洋書を読んでいるとちらほら知らない単語があったりするし、知っている単語でも違う文脈でてくると即座には意味がわからなかったりする。

その他

今年はプログラミングについても積極的に取り組んでいた。Rustを学んで趣味のWebアプリを作ってみたり、仕事で使うためのOSSライブラリを作ってみたりしていた。それなりの時間量は投入したけど、大きな成果はまだできていない。

その他もあまりうまくいかなかったことがあった。

もっと頻繁に文章を書いてブログに投稿したいなと思って取り組んでいたが、あまりうまくいかなかった。目標は1ヶ月に1記事書くことだったけど、結果は6記事程度だった。習慣化するために今も試行錯誤している。

海外旅行に行く前に、集中的に外国語を学ぶのに挑戦していたけど、練習量が足りずそんなにうまくいかなかった。

韓国旅行前の1週間でハングルを練習したり、スペイン旅行前の何週間かでスペイン語を練習したりしていた。何も知らずに行くよりは楽しい体験ができたけど、実用性はなくて現地では英語や日本語のほうがスムーズなことも多かった。

やはり長期間にわたって継続するのはむずかしい。旅行などランダムで非日常なイベントが来ると、習慣は壊れやすい。

今年は旅行に行く機会が多かったので、何度も習慣が壊れそうになった。非日常が終わった瞬間に、速やかに習慣に戻ることを心がけていた。海外旅行から日本に帰った日が月曜なら、どれだけ疲れてても帰宅した直後にジムに行った。一度壊れた習慣を直すのはそれよりも遥かにしんどいということを知っていたからだ。

まとめ

2022年は運動と英語学習の継続を目標に取り組んで、実際に継続して目標はおおよそ達成できた。特に運動・筋トレで成果が大きかった。

継続という意味では安定してきたので、次は新しいことに挑戦していけるといいなと思っている。

2023年に続く。

紹介する本にアフィリエイトリンクを貼っている

本を他の人に共有するとき、Amazonアソシエイトアフィリエイトリンクを使うようにしている。

ブログで紹介するときはもちろんとして、Twitter に書くときも社内の Slack で共有するときもアフィリエイト付きのURLを貼るようしている。

理由は、紹介した本を買ってくれたのがわかると嬉しいからだ。レポート画面でリンク経由で何冊購入されたかが見れる。

当然、紹介料が Amazon ギフト券で入ってくるので、小遣い稼ぎになるというのはあるけれど、ほんとに中学1年生の小遣い程度にしかならないので大きな理由にはなっていない。

自分が共有したことで、人に良い情報が伝わったかを計測するのには、アフィリエイトリンクが一番手軽な方法だと思って続けている。

本の感想

本当は、本を買ったあとに実際読んでくれたことまでわかればいいんだけど、それはわからない。ときどき直接感想を聞かせてくれることがあるけど、そのときはとても嬉しい。雑な感想でも突然のDMでもどういう形でも嬉しくて、どんな単純な感想でも学びが多いと思っている。単純な感想ほど本質を射抜いていることもある。

他の人の感想を聞くと、いかに自分が本を浅くしか読めてないかに気づかされる。

読むことに時間をかけている割に、本筋と離れている面白い一節だけをサンプリングして覚えておくような読み方しかしてないから、反省をよくしている。

古代ローマに関する本を読んでも、「約束どおりにカルタゴにもどったレグルスを、カルタゴ人は、丸い籠 の中に押しこめ、それを象たちがフットボールするというやり方で殺した。」みたいな一節だけをハイライトして、本筋の話をほとんど忘れるような知的生産性がゼロの読み方をしている。

実績

2022年は紹介料は全体で2万円程度だった

僕も仕組みはよくわかってないけど、メールでその月から何ヶ月か遅れて Amazon からギフト券が送られてくる。夢は紹介料だけで普段の本の購入費用をまかなうことだけど、その話でいうと大幅な赤字になっている。

一番買われた本は

だった。

結局皆お金のことしか考えとらんのか…という気もしてくるが、それは別の話になる。

ツイートで紹介することもあるし、ブログ記事の中でまとめて紹介することもある。

uiuret.hatenablog.com

肯定

他の人、友達、会社の同僚ももっと皆アフィリエイトリンクを使うといいと思っている。

コソコソ小銭稼ぎしているようで後ろめたい気持ちになるというのはわかるけど、クソデカ外資大資本の取り分になるよりは個人に収益が配分された方がいい。リンクを作るのにも手間はほぼかからなくて、ツールバーで2クリックでリンク生成できる。生成されたリンクは短縮URLになるから目にも優しい。

アフィリエイトリンクを常に使うようになってから、本の感想を頭グリグリひねって考えてでも共有する頻度が増えてきたし、自分にとってポジティブなフィードバックになっているのを感じる。

どれだけ紹介した本が買ってもらえているかレポートをたまに眺めるのが、ささやかな楽しみになっている。

0か100を生きるためのバーベル戦略

バーベル戦略とは、リスクの両極端を組み合わせ、中程度のリスクを避ける投資戦略のことである。 低リスクの作戦をとる一方で、同時に高リスクの作戦をとる。たとえば、低リスクを90%を、高リスクを10%をポートフォリオとして組み合わせる。 リスク評価の精度が信頼できない環境で効果的だとされている。 参考

タレブの反脆弱性という本に出てくるアイデアはどれも面白い。その中でも、僕が気に入っているのは、バーベル戦略と呼ばれる考え方で、 日常的によく使っている。

元々投資のコンセプトではあるけど、投資の分野だけでなく日常の物事にも適用できる。生き方を考える上でもかなり示唆があると感じることが多いので、個人的なメモをまとめてここに書いておく。

バーベル戦略

バーベル戦略は、低リスクと高リスクの両極端を組み合わせる投資戦略である。中程度のリスクをとるのは避ける。
たとえば、株式投資であれば、資産の90%を国債(低リスク)に配分しつつ、10%でベンチャー(高リスク)に配分する*1のが、バーベル戦略の1つだと言える。

こうすることで、資産の全体を比較的安心安全に保ちつつ、高リスクによるリターンを同時に狙うことができる。90%を安全な場所に置いているので、予期しないイベントが発生しても90%は比較的確実性が高い状態で保護されると言える。

バーベル戦略は、一方では安全策をとり、もう一方では大胆にリスクをとる戦略、と考えると覚えやすい。

名前の由来

なぜバーベル戦略という名前なのか? 図にすると両極端に重りがあるバーベルのように見えるのが由来。

なぜ中程度のリスクを避けるのか?

人間のリスク評価は間違ってることが度々あるからだ。リスク評価の精度が信頼できない場合がある。

たとえば、サブプライムローン証券化した金融商品は良いリスクリターンのバランスを持っているとされ、高い格付けを与えられていた。実際には評価よりもリスクが高く金融危機を引き起こす要因になった。

リスク評価の精度が信頼できないとき、どうすればよいか?バーベル戦略はリスクの両極端に注目する。

超低リスクの物事は実際にも超低リスクである。超高リスクの物事は実際にも超高リスクである。中程度のリスクよりもリスク評価の精度が比較的高いと言える。

リスク評価の精度が信頼できる両極端のみを選び、中程度のリスクは選ばない。

「知識、時間、計算リソースが限られた環境ではリスク評価自体が信頼できない」とタレブは言っている。

バーベル戦略の日常への適用

バーベル戦略は、一方では安全策をとり、もう一方では大胆にリスクをとる戦略、ということになる。
この意味でのバーベル戦略は、人生での他の物事にも適用することができる。

僕が高校・大学時代に試験を突破するためにとっていた戦略を例に説明をする。(当時はバーベル戦略を知らなかったが)

毎日のようにコーヒーを飲む代わりに、普段はコーヒーをまったく飲まず、試験直前にだけ必要なだけコーヒーを飲みまくる戦略である。 カフェインの効果で、試験時間に集中力・計算能力を劇的に増加させることで試験を突破するのに役に立った。これをカフェインバーベル戦略と呼んでみたい。

バーベル戦略を作る

問題にバーベル戦略を適用するためには以下のようなプロセスを辿ると考えやすい。

まず、リスクを分析する

  • 低リスク(低リターン): コーヒーを飲まない
  • 中リスク(中リターン): コーヒーを1杯飲む
  • 高リスク(高リターン): コーヒーを好きなだけ飲む

そして、低リスクを90%、高リスクを10%となるようにリソースを配分して組み合わせる(この場合はリソースは時間だと言える)

  • 安全策: 普段は、コーヒーをまったく飲まない
  • 大胆策: 試験前、コーヒーを好きなだけ飲む

このように両極端のシンプルな組み合わせからバーベル戦略は構成できる。

この場合、なぜ中リスクを選ぶべきでないか?を考えてみると、以下のような理由がある。

  • 毎日カフェインを摂取するのは、実はカフェイン依存症などの意識されにくいリスクがある
  • 毎日の量を増やすとカフェインによるリターン(効果)は落ちる

注意点: 破滅を避ける

大胆にリスクをとるが、たとえ失敗しても破滅にはならないようにする。
たとえば、以下のような例は、大胆策でとるリスクが高すぎるため破滅する。

例:

  • 安全策: 普段はリモートワークで家から出ない
  • 大胆策: たまに深夜の時速200kmで首都高速道路をルーレット走行をする → 破滅

バーベル戦略の例

思いつく限りのバーベル戦略の例を並べる。個人的に日常的に活用しているものもあれば、読んだだけで一切実践してないものもある。

  • 毎朝コーヒーを飲むのをやめ、試験の前に好きなだけカフェインを摂取する
  • 普段は運動せず、週2回だけジムで短時間で高強度のトレーニングをやる
  • 気楽な公務員として勤めつつ、空いた時間で好きなだけ研究をする (アインシュタイン)
  • 週末は出かけず家に引きこもり、何ヶ月かに1回海外旅行に出かける
  • 普段はゆっくりとした生活を送り、たまに山手線一周を歩くようなエクストリームな活動をする
  • 公務員と結婚しつつ、たまにバンドマンと浮気する (反脆弱性)
  • 大学で最低限の単位をとりつつ、ベンチャーを起業する
  • 毎日怠惰に Tinder をスワイプする代わりに、週末に腱鞘炎になるまでスワイプし続け、光の速さで返信する (参考)
  • 週1日だけオフィスに出社する、週4日はリモート勤務にし会議を入れずに仕事に集中する。
  • 朝集中して小説を書く、夕方からは好きな翻訳をして過ごす (村上春樹の生活)
  • 朝8時~12時の4時間でその日のすべての仕事を集中して終わらせる、そのあとは技術調査をしたりドキュメントを書いたり好きなことをして過ごす
  • 週6日働き、週1日なにもしない (ユダヤ教の安息日)

バーベル戦略と僕

無意識的にバーベル戦略を日常に適用している人もいると思う。僕もバーベル的なやり方で人生で出くわした問題を攻略してきた。*2

バーベル戦略の大きなメリットの1つは、人生の退屈を破壊するのに役立つ、ということにある。毎日同量の物事をやっていると、日常は平坦になっていき、どんどん退屈になっていく。こういうとき、意識的にバーベル戦略に切り替えると、退屈を粉砕し人生をより刺激的に保つことができる。

一方で、バーベル戦略を適用できてない事柄もある。毎日継続的な練習をするのが効果的な物事はある。 たとえば、外国語学習では毎日継続的な訓練が効果的とされている。月に1回8時間集中的に英単語を復習する戦略はあまり有効ではない。
この場合は、習慣化する戦略が効果的でこのことは過去の英語学習についての記事にも書いた。

脳を長期記憶システムは頻繁な刺激を情報として受け取ることで、知識を長期化する仕組みになっていることが一つの理由としてあると思う。

参考

終わりに、メモする上で強く参考にした本や記事を紹介しておく。

脆弱性

まず、当然ながら反脆弱性。バーベル戦略はタレブの他の著作でも繰り返し言及されている。

Examples of barbell strategies

英語記事ではあるけど、バーベル戦略を日常に適用するアイデアが多数紹介されていて面白い。

Examples of barbell strategies - by Dwarkesh Patel

暇と退屈の倫理学

直接は関係しないが、これを書いていて思い出したので書いておく。 人生は退屈に始まり退屈に終わる。暇と退屈の倫理学では、退屈の問題を分析するのに役立つ考え方が説明されている。

*1:ベンチャー1社でなく何社にも投資してVC的なポートフォリオを組む

*2:うまくいったことも、とてつもない間違いをしたこともあった

不眠東京 徒歩で山手線一周

人生には、これをやらないと一生後悔するだろうなと思う瞬間がある。その瞬間が来たときには、必ずそれを実行するようにしている。 当然ながら理性が抵抗するわけだけど、なんとか抵抗を押し返す。

電撃のようにその瞬間が来たのは、GW前の平日にオフィスで仕事した後帰る間際のことだった。

同僚のTくんが日曜に山手線を徒歩で一周した、と言う。「本当に素晴らしい体験だった、お前らもやるべきだ」とやや煽り気味に伝えてくる。
確実にしんどいからやだな、と思った。しかし、GWの祝日があり、天候も良く、歩くのにこれ以上に素晴らしいタイミングはないと気づいた。

山手線一周をやらないと絶対一生後悔する、と思った。この瞬間がやってくると僕はやらざるを得ない。その場でもう一人の同僚と一緒に歩く決断をした。

事前情報

山手線についてはそれほど知らない。東京を走っている電車ということは知っている。駅の名前を全部言うことはできない。

聞いた話をまとめるとこんな感じだった:

  • 一周は大体40km
  • 駅は全部で30コある
  • 電車に乗ると約1時間で一周できる

思想

40km の距離を歩くという無味乾燥で単純な行為を実行するためには、思想というものが重要になってくる。たとえば、約40kmを走るという行為はマラソンという記号と意味がなければただの奇行である。260円で1時間で済む移動を、わざわざ歩いてすることには経済合理性は一切ない。

夜の東京を歩く

夜の街が好きだ。夜はクールで静かだ。昼間とは変わった表情のビルを見るのが好きだし、冷たくなったアスファルトに触れるのも好きだ。
6年前に東京に引っ越してきてからまだ見てない部分の街がある。地に足をつけて歩くことで、街を身体の一部として感じたい。

実行するのは祝日なので、活気のある夜の街を見ることができるはず。ウイルスが来てから何年も、夜の賑わいが恋しくなっている。

同僚のTくんが歩いたのが昼なので、夜眠らずに歩くことでマウントをとりたい、という意味合いも若干ある。

記憶の旅

山手線の駅は30コある。駅1つ1つを20代までの自分の誕生日に対応させると、1年ずつ思い出すことができて、これまでの人生の記憶を同時に旅することができる。

0才の頃の記憶は当然ないし、30個目のことはまだわからない。普段忙しく生きてると、時間軸を通り抜けるように記憶を取り出すことはないから、不完全でも面白いだろう。走馬灯のようなものかもしれない。

恵比寿駅 スタート (0km)

2022年5月3日 祝日 18:00 に恵比寿駅に集合した。渋谷方面に時計回りに歩き始めた。

品川・大崎方面でなく、渋谷・新宿方面に歩き始めたのは、人が賑わっているうちに渋谷・新宿・池袋の街を見たほうが楽しそうと思ったからだった。 この意思決定は終盤に響いてくることになる。

渋谷駅〜池袋駅 (~14km)

渋谷、原宿、代々木、新宿、新大久保、高田馬場、目白、池袋。

とても心地よい歩行だった。馴染みのある道も多くて、2時間ほどで池袋に着いた。僕は、家から遠い、という理由で新宿や池袋での飲み会の誘いを断ってたタイプの人間だけど、歩いてみると意外と近く感じられた。

着いた駅の看板の写真を毎回とることにしていて、大型の駅で良い撮影スポットを探すのに、若干距離を消費したけど、それ以外には大きな問題は感じなかった。

ただし、池袋に到着したときには、右脚に違和感のようなものを感じ始めており、確実にHPが減っているという感覚はあった。体力はまだあるが、確実にダメージは受けている。

20時頃でちょうどよかったので、晩ごはんをなか卯で食べる。テンションが高いので、親子丼にミニうどんをつけた。ミニうどんを食べる意思決定はこのあとに影響してくることになる。

池袋駅上野駅 (~25km)

池袋、大塚、巣鴨駒込、田端、西日暮里、日暮里、鶯谷、上野。

歩行開始から約5時間、上野駅に着いた。この区間は日常生活ではほぼ来ることがないので、東京の街の知らない部分、という感じだった。来たことはなかったけど、歩いていて静かで落ち着く。

びっくりしたのは、ほぼどの駅にもアトレ(商業施設)が付着している。建物が新しい駅も多い。

上野駅までくると、もうけっこう回れたかなと勝手に思っていたけど、実際はまだ半周だということに歩いている途中で気づく。

歩くのにはそこまで支障はないけど、ダメージは右脚に確実に蓄積しており、上野駅に到達する前に右脚のHPゲージはゼロになっていた。1度目の右脚の限界が訪れて、痛みは次のレベルに達したように思う。

また、なか卯でミニうどんを欲張って食べたことがマイナスの効果となって現れた。胃が収縮してうどんを消化できてない感覚があり、気持ち悪い。たまに胃から逆流した関西風うどんだしのフレーバーが鼻を通り、夜の冷たい空気中に抜けていく。

上野駅は23時だった。上野駅の看板の写真をスマホで撮ってると、 泥酔した若い女に「何やってんの??」と話しかけられる。 駅の写真を撮ってる、と言うと「そうか駅の写真撮ってるんだ…」と戸惑った顔をしていた。 女は仲間に介抱されて改札に去っていった。

上野駅〜新橋駅 (~33km)

上野、御徒町秋葉原、神田、東京、有楽町、新橋。

歩行開始から約6時間。夜0時ちょうどに東京駅を通過して新橋駅に着く。上野から東京までは駅から駅の距離が小さく、道もまっすぐで、テンポよく進めた。

東京駅には人間がほぼいなかった。休日に人が少ないといっても極端過ぎるように感じた。清潔で道が広いのに人間がほぼいない。
有楽町、新橋の辺りにもあまり人がいなかった。飲み屋の多くも閉まっていて、人の気配がない。

右脚は1度目の限界を通過し、2度目の限界に近づいている。右脚の部分的だった痛みはすでに伝染するように腰まで達してきていた。

ここ最近は健康的な睡眠サイクルにチューニングされていたので、0時になるとすでに眠い。脚の痛みと眠みが交互にやってくる。

新橋駅〜田町駅 (~36km)

新橋、浜松町、田町。

駅でも2駅、距離的にも3kmしかないが、精神的な距離はとても長かった。新橋駅を過ぎると、途端に街の空白が増えてくる。空白が増えると、眠気が増す。

この区間で、右脚は2度目の限界を超えて、右脚としての正しい機能を失った。歩くことはできるのだけど、シフトキーが動かないキーボードみたいに本来の機能が使えない状態になった。
下半身は腰から爪先までまんべんなく痛みが行き渡り、痛みを詰め込んだ革の袋みたいだった。

このままではまずいので、公園で休憩をとったがあまり回復しなかった。休憩をとると、痛みと交代して強い眠気がやってくる。 唯一効果を感じたのは、分けてもらったシゲキックスで、酸っぱさが脳を貫いて目が覚めた。

足が2本の棒のようになって、ゾンビみたいに歩いていた。足を限界まで使うと、自然とゾンビのような歩き方になっていくのは面白い発見だった。ある意味でゾンビ歩きは理にかなっている。

田町駅〜大崎駅 (~41km)

田町、高輪ゲートウェイ、品川、大崎。

大きな虚無の中を歩いている気分になる。街に見るものは特になくなり、3D空間をただ歩行して進んでいる気分になる。

僕はこれほどまでに高輪ゲートウェイを憎んだことはない。駅までが遠い。直線的で人工的な道を冷たい風が通り、薄いパーカーを突き抜けて体が震えた。写真を撮るために立ち止まった一瞬を狙って、眠気が攻めてくる。

腰と脚全体が限界を迎えた後は、シンプルに精神の闘いになってくる。身体の力ではなく、意志の力だけど前に進んでいるイメージがあった。

身体で戦えなくなると、言葉で戦うしかなくなってくる。「痛いけど歩けるから、痛みは非本質的で無関係」「しんどいオブ・ザ・イヤー2022受賞決定」などといった言葉の空中戦を交わしていた。

品川駅と大崎駅の間が一番つらかった。坂は長く、道はとんでもなく大きく、心細い気分にさせられた。こんなに弱々しい気分になったのは、インドで食中毒で一人寝込んだとき以来だ。

大崎駅に着いた時刻は正確に覚えてないけど、駅のシャッターは閉まっていて、看板の写真を撮るのに手こずったのを覚えている。

大崎駅〜恵比寿駅

大崎、五反田、目黒、恵比寿。

大崎駅から恵比寿駅までの距離は、ただ耐えて進むだけだったと思う。

午前4時に恵比寿駅に着いた。トータル距離は45km。18時に出発したので、時間だと約10時間かかった。
これほどの距離を歩いたのは人生で初めてだったので、達成感があって良かった。

旅の終わり

電車もないし、脚ももう使えないので、恵比寿駅からはタクシーで家に帰った。 タクシーから降りたとき、ちょうど夜明けで、朝焼けが赤から紫に向かってグラデーションを作っていて美しかった。

参考のために、当日のツイートとスクリーンショットを貼っておきます。

AI時代の英語学習法

意識的な英語学習を再開して1年以上経つ。以前に英語学習をしていたときよりも、技術面での進歩のおかげでより効率的な学習ができるようになっていることに気づいた。

トライしてきた学習方法のなかで、いまも日常的に運用しているテクニックを紹介しようと思う。
僕自身の目的として、話す能力と読む能力にフォーカスしていたので、口頭英作文と語彙獲得の内容が多い。

この中で最もパワフルな学習方法は、AIと最も関係ないので最後に書く。Anki による長期記憶化システムである。

YouTube 字幕を使った語彙獲得

好きな映画を見続けるだけで、自動的に語彙が増えていき、リスニング能力も高まっていくとしたら、素晴らしいことだと思う。
Language Reactor という Chrome 拡張を使うと語彙獲得がとても捗る。画面に検索可能でスクロール可能な字幕を開きつつ、動画を見ることが可能になる。

最近の YouTube の動画のほとんどには字幕生成機能がついていて、自動生成の字幕でも精度は十分に高いので英語学習用途ではほぼ困らない。英語を聴く能力に関しては技術は英語学習者を大きく超えている。

知らない単語が出てくるたびに、文ごと後述する Anki アプリにコピペする。辞書で単語の意味のみ補ってフラッシュカードに登録する。 単語だけでなく、文ごとコピペして単語を太字にする、というのがコツで、こうすると単語が使われたコンテキストを思い出しやすい。
Anki で復習するときに記憶が動画と関連づけられているので、意味も覚えやすい。フラッシュバックと似た力を活用できる。

このやり方を覚えると、あとは YouTube で好きな英語の動画を見続けるだけで意味がわかる単語が増えていく。
Netflix 用の拡張もあるので、Netflix の映画でも同じことができる。個人的には YouTube のほうが短い動画が多く、セクションごとのシーク移動も簡単なので、やりやすいと思う。
おすすめは Podcast 等の切り抜き動画で、内容の密度が高いし無数にあるし集中力が続きやすい。

Language Reactor

Google 翻訳を使った瞬間英作文生成

瞬間英作文は、スピーキングスキルを伸ばすのにはかなり強力な学習方法だと思う。
ただし、弱点はあって、すぐに教材が不足すること、日本語対訳を用意するのが面倒なこと、そしてなによりも退屈なことが弱点ではある。
この弱点をカバーするために、以下の手順で瞬間英作文の素材を生成している。

  1. 好きな英語文をどこかから拾ってくる
  2. Google 翻訳を使って日本語訳を生成する
  3. 日本語と英語をセットで Anki に登録する

まず、どこかから英語の文を拾ってくる。YouTube、ブログ、電子書籍などどこでもいい。意味は簡単に理解できるけど、自分で思いついて話せないな、という表現であればベスト。

そして、その英語の文をコピペして Google 翻訳に入れて日本語に変換する。
DeepL 等でなく,なぜ Google翻訳を使ってるのか? 比較的直訳風の日本語が得られることが多いから。復習するとき、日本語から英語への変換することになるが、直訳調であるとやりやすい。

最後に、Anki に 日本語 → 英語 のフラッシュカードを登録する。復習するときは音読する形で口頭で英作文をする。

普段、英語の文章を読むときに、意識して文を拾ってくる必要はあるが、習慣化できると使える表現の数は自動的に増えていく。

発音矯正アプリ

知っている人も多いと思うので簡単に書くが、発音矯正には ELSA Speak を使っている。
アプリが発音を認識してくれて、ネイティブの発音との違いをフィードバックしてくれる。毎日提供されるクイズ形式なので続きやすい。

似たアーの発音の違いをうまく認識できてなかったり、子音が綺麗に発音できてないことに気づける。発音についてはなかなか自分一人では気づきにくい。
毎日やると音読をする習慣づけにもなり、字ではなく音としての言葉を意識しやすくなる。個人的に、視覚的に言葉をとらえてしまうことが多いので、わざと多めに音読することで音としての英語を意識しやすくすることにしている。

apps.apple.com

画像検索

ちょっとしたテクニックではあるけど、表現によっては画像で可視化すると暗記効率が飛躍的に上がる。
過去にも書いた内容 だけど、単純で今でもよく使うので、紹介しておく。

たとえば、 ledge という単語があるが、辞書を引くと以下のように書いている。

(壁面から棚状に突き出た)出っ張り, 棚; 岩棚

ちょっとイメージしにくく、想像力が試される。

ledge で画像検索すると次のように見える

こういうときは画像を1枚選んで右クリックで「画像をコピー」して Anki にコピペする。「(壁面から棚状に突き出た)出っ張り」という文字列を覚えるよりも圧倒的に覚えやすい。

長期記憶化システム

言語を使えるスキルにするためには、短期記憶ではなくて長期記憶に言語知識をインストールしていく必要がある
技術がどれだけ進歩したといっても、人間の脳の仕組みは数万年前から変わっていない。ここで使うのは原始的な方法になる。繰り返し、つまり、反復学習になる。

Anki という、原始的だがパワフルな反復学習をサポートするアプリがある。スワイプすればスワイプするほど英単語を覚えられる Tinder だと思っていい。
Anki を長期記憶化するシステムとして使っている。学習の時間効率を最大化する間隔でフラッシュカードを復習させてくれる。

2021年に開始してから1年以上1日も欠かさず毎日続けている。海外旅行にいく日もワクチンで高熱で寝込んだ日も毎日やった。
Anki については過去の記事にも詳しく書いた:

uiuret.hatenablog.com

まとめ

これまでトライしたなかで学習効率が良いと感じている学習方法をピックアップして紹介しました。
当然なんだけど、人によって最適な学習方法は違う。自分にとって良い学習システムを見つけるのに、参考になれば嬉しいです。

大学を中退して何が変わったか

4年前に京都大学中退した。理由についてはここには書かないけど、ここまでを思い返してみると意外な変化がいくつかあった。

入学して2年目からは大学にほぼ通わなくなり、2年間留年し、4年間休学したのちに退学した。休学中には働いていたので、実質的には8年前に辞めたことになる。*1最終学歴は高卒ということになる。

現状は、幸いなことに仕事には困っていない。直感で選んだスキルと業界が良かったのがラッキーで、ソフトウェアエンジニアとしてベンチャーの第一線で不満なく働けている。

一つ注意しておくと、この文章は大学を中退することを薦めるものではない。またその逆に、卒業することを薦めるものでもない。

良かったこと

家族が優しくなった

これが最も意外で大きな変化だった。親や家族が優しくなった。学生の時よりもそのままの自分を受け入れてくれているように感じている。

大学を辞めるまでは、家族が僕に持つ期待は高かったように思う。

大学に進学し、当然のように卒業し、周りと同じように大学院に進学し、修士を卒業した後は、それなりに名前の通った大企業に就職する。家族はそういう期待を持っていた。

僕も気にはしないようにしていたが、プレッシャーを感じていた。僕が休学することを話したときも、親はかなり落胆した表情をしていた。

僕が早い段階で大学に行かなくなることで、家族の期待を破壊してからは、僕に過度な期待はしてこなくなった。僕のことを人間として気にかけてくれることが増えたように感じる。

過度な期待がなくなると、コントロールしようとしてこなくなった。コントロールがなくなったことで、より自由を感じることができるようになった。

スキルに言い訳ができなくなった

自分の中での心理的な効果として、自分の持つスキルや能力について甘えることができなくなった。

何の権威付けのパワーも使えないので、自分のスキルに頼ることしかできない。常にスキルや能力を高めつける必要がある。この事実のおかげで、意志の力が強くなったように思える。

僕が根が怠惰ですぐにサボってしまう。

たとえば、学習をサボりたくなったとき、すでに中退していることを思い出すとやらなきゃという意志が復活する。仕事をサボりたくなったときも、仕事すらできなかったらもうおしまいだから頑張ろうという気持ちになる。

この数年の話でいうと、英語学習に投資する決断をして毎日継続する助けにもなった。

背水の陣という言葉があるが、その心理状態に近い。元々はその言葉自体信じていなかったけど、実際に体感してみると直接的に心に作用することがリアルに感じられる。

良くなかったこと

見下してくる人はいる

あえて良くなかった点を挙げるなら、大学を卒業してないという理由だけで、見下してくる人はいる。多くはないが実際にいる。

社会的地位が高いとみなされる人間の中にもそういう人はいて、明らかにナメた態度をとってきて、相手にしてもらえなかったりはする。

あまり気にしてないし、元からそのタイプの人間と関わりたくないので問題ないのだけど、実際にそういう人間がいることは確かである。

変わらないこと

思い返してみると、当時は極度に不安だった。しかしそれと同時に、その極度の不安が学ぶへの意志を強くした。強迫観念に駆られるように、仕事に関するあらゆる本を読み尽くしたし、その知識が今現在仕事をする上での土台になっている。

今では、あらゆるネガティブな要素はポジティブになりうる、という態度を持つようになった。

これまでは運が良かったと付け加えておく。今のスキルと市場と別の選択をしていれば、今のような自由は得られなかったと思う。

誰も疫病が蔓延し戦争が起こることを思わなかったように、将来のことは誰にもわからない。ただ、学び続ける限り不安を鎮めることはできる。

*1:厳密には、留年と復学を何度か挟んでいるので、実際の時系列はもうちょっと複雑