オマーン 中東の国を静かに旅する

エジプトを巡ったあと、アブダビを経由してオマーン・マスカットに到着した。オマーンは良い国だと複数の友人から前から話に聞いていた。

オマーンアラビア半島の南東、ドバイやアブダビのあるアラブ首長国連邦の南側にある。

エジプトで心を消耗したあと、丸1日かけた移動で体力も消耗していた。マスカットに着いたのが深夜2時だった。空港からホテルまでタクシーで移動した。

タクシー運転手のおじちゃんがちゃんとメーターを使ってくれてしかも料金の端数をまけてくれて、普通の優しさに泣きそうになる。普通のタクシーに乗れるだけで感動してしまう。

大人の静かな国

翌朝起きて街を歩いていると、ああここはすごくいいな、と思った。すぐに好きになった。

まず、道が綺麗で歩きやすい。なんだかツヤツヤしている。自由にフラフラと歩ける。

外の雰囲気が全体として静かだ。ちょっと不思議に感じるけど、歩いている人をあまり見なくて、普段でも日本の早朝の街に似た静かな雰囲気がある。

気候が良い。海から来る風が気持ちいい。1月のマスカットは昼が27℃くらいで理想的でちょうどいい気候が続く。雨もまったく降らない。カフェまで歩いていって、ゆっくりテラスに座ってコーヒーを飲んでいるだけで、良い気分になった。

海岸まで行くと、長くて綺麗なビーチがある。ビーチもあまり人がいなくて、こんな静かなビーチはなかなか見たことがない。砂浜が遠く浅くて優しい。宗教上の理由があって泳ぐ人などがいないという事情もあるらしいのだけど、それにしても静かだ。

人はカフェのテラスに座って話をしたり本を読んだりしている。時間の流れ方がすごくゆっくりしている。

天国があるなら、きっと天国もこんな感じで明るくて暖かくて静かで、ちょっとだけ味気ない感じなんだろうな、と思った。そのちょっとの味気なさでさえ好きになれそう。

旅のしやすさ

オマーンは旅がとてもしやすい。

英語が広く通じるのが嬉しい。大抵どこに行っても人が英語を話してくれる。人によっては多少アラビア語訛りがあるときもあるが、特に問題にならない。

店の看板でもアラビア語に英語が併記されている。アラビア文字がニョロニョロしててかわいい。

人も穏やかな印象で、親切だった。観光客が少ないというのもあるのかもしれないけど、優しくしてくれる人が多い。レストランの店員が僕に純粋に興味を持って会話してくれたりする。

物価は日本より少し安い印象で、治安も良い。外務省の安全情報を見ても、オマーンは真っ白で安全。

移動に車が必要なことが多いけど、公共交通機関として綺麗で安価なバスが走ってるし、その辺にタクシーがいるのであまり困らない。

人口の半分以上がオマーン人で、大部分がアラブ系なのでアラブ系文化を感じやすくて、旅をしていて面白さを感じやすい。アラブ民族衣装を着ている人々が多く、見るだけで異国を感じてテンションが上がる。アラブ首長国連邦のドバイなんかに行くと、人口の9割が外国人労働者でインド系が多すぎてここはインドなのか?と思ってしまうこともある。

博物館に行く

海岸の道路をタクシーが走る。道路沿いに壁のような岩山が立つ。岩肌の露出感がカッコイイ。純白の建物が並ぶのが見える。

オマーン国立博物館を見学した。白くてツヤツヤした建物で、中でダウ船や各地の装飾品など海の民らしい展示物が見れた。

オマーンはかつて海洋貿易国家として栄えていた国で、歴史的な深みがある。砂漠の中に石油と共に湧いてきたような都市じゃないことを国民は誇りにしているらしい。歴史的な観光名所もあるようで、古い要塞などが残っている。

スークにも寄る。ここだけは観光地感があって、何かを買おうとすると価格交渉が必要で値段をふっかけられたりする。

価格交渉をしていて思うのは、通貨の単位が大きくて油断すると多めに払ってしまうこと。1オマーンリアルが日本円で約400円で単位がでかく、リアルさを感じる。単位があまりにでかいので、その半分の1/2オマーンリアルもある。1オマーンリアル単位で交渉していると、妥協して400円高い値段で買ってしまったりする。

それでも、人通りが少ないし、地元の駅の小さな商店街感があって他の国に比べると歩きやすい。

シャワルマとアラブスイーツ

食べものに関しては、迷ったらシャワルマつまりケバブを食べていた。生地がパリパリ。テラスでシャワルマをほうばっていると、店員が楽しそうに話しかけてくれて優しい。

カフェで食べたアラブスイーツがとても美味しかった。クナーファ。外がカリカリしてて、中はチーズが入っててとても甘々な味がする。トルココーヒーを飲みつつ、クナーファを食べると、苦さと甘さがちょうどいい。

近くにハイパーマーケットがあったので、フラフラ見物しに行く。スーパーじゃなくて何がハイパーなのかはわからないけど、たしかに品揃えが良い。全然知らない国で果物や魚を眺めているだけですごく楽しくて不思議だ。イエメン産のザクロ、パキスタン産のマンデリンオレンジ、オマーン産のパパヤ、見てると楽しい。

スパイスコーナーがあって、一角にズラッとスパイスが並んでいる。圧倒される。

モスクを見る

グランドモスクを見に行く。

モスクなんてどこも同じようなものだろうと思ってたのだけど、モスクのメインホールにあるシャンデリアには驚いた。大きく質量感があるのに、すごく繊細な光を放ちながら宙に浮いている。なんだか高度な異星文明の宇宙船みたいだった。こんなに精巧さと質量感を同時に持った存在は見たことがない。スワロフスキー水晶で作られていて、高さは14メートル、重さは8トン、1122本の電球で構成されているらしい。

モスクの建物の外側はクリーム色で石で作られているのに優しい印象がある。床がツヤツヤしていて鏡みたいに光を反射している。人が少なくて静謐だった。

旅の終わり

オマーン・マスカットを巡っていた間、どこを行っても静かで、日常と喧騒に疲れていた僕にとっては癒やしだった。静かに動くような旅もいいな、と感じた。

今回オマーンはマスカットという海岸の都市を見ただけだけど、内陸には手がついていない自然が多いらしい。また、時が来たら、今度はゆっくり静かに自然を感じたいと思う。