ニコニコ動画とにこ☆さうんど

 ニコニコ動画の動画から音声をMP3ファイル化する「にこ☆さうんど」の運営で著作権法違反の罪に問われた男性被告に対し、札幌地裁は7月16日、懲役3年(執行猶予4年)・罰金500万円(求刑懲役3年・罰金500万円)の判決を言い渡した。

 告訴した日本音楽著作権協会JASRAC)とドワンゴ・ユーザーエンタテインメント(due)によると、公開されているコンテンツをリンクやダウンロードなどで入手し、自身のサイト上で公開・誘導している「寄生型サイト」の違法音楽配信で、サイト運営者が著作権法違反の有罪判決を受けたのは今回が初めてという。

「にこ☆さうんど」運営者に有罪判決 - ITmedia ニュース

事件について思うところがあるので書いておく。はじめに意見を明確にしておくと、被告が著作権法に違反していたことは事実であり、そこに何らかの異論を唱えるつもりは一切ない。

ここに書くのは事件から感じる違和感についてだ。

かつてニコニコ動画Youtubeの寄生型サイトだった。当時のYoutubeには違法な著作権コンテンツが多数アップロードされており、ユーザーが訪問する理由もテレビやアニメなどの動画を無料で見れるということだった。ニコニコ動画も似たようなものであり、Youtubeにアクセスを遮断されてからも、さして変わらずコンテンツのグレー感は消えなかったように思う。

この事件のユーモラスな点は、かつて違法な寄生型サイトであったサービスを今もなお運営している企業が、同様の寄生型サイトを告訴したという点にある。完全に「お前が言うな」という感じだ。

もう一つ面白い点は、ニコニコ動画側がNicoSoundという名称で同じ趣旨のサービスを運営していることだ。(もっともこちらは著作権に配慮しているようだけど)

企業が自ら告訴した著作権違反サイトと"ほぼ同じ名前"でまったく同じ内容のWebサービスを運営していることになる。にこ☆さうんど作者は跡地でにこ☆さうんどとは無関係であると書いている。

これはニコニコ動画はにこ☆さうんど作者を告訴する一方で、作者のアイデアを恥もなく盗んだということである。なんともジャイアニズム的だ。

広告で1億3000万円を売り上げるサービスを開発した作者の創造性は稀有だ。たとえその仕組みが単純であったとしても、多くの人々に使われていたことには他とは違う何かがあると感じる。結果として、作者の創造性によって多くの人々が音楽と幸福を享受することができた。(もっとも手段は違法だったけれど)

勝てば官軍というのはまさしくそうだと思う。同じ"違法サイト"を運営していた者でも一方は社会的に成功が認知され、もう一方は有罪判決を受け自由を拘束されることになった。

もはや個人でWebサービスを運営することがむずかしい時代なのかもしれない。

補足

「個人でWebサービスを運営することがむずかしい」という結論が意味わからんとの指摘を受けたので補足しておく。たしかに、ちょっと雑すぎたかとは思う。

僕がこの事件を恐いと思うのは、動画から音声を抽出するという程度のサービスを提供するだけで逮捕され有罪になるということである。個人のWebサービス作者にとっては逮捕がより近しいものに感じられると思う。

3D女性器の問題もそうだけど、違法かどうかを判断することは個人にとってむずかしい。ネット文化を生きてきた僕たちはグレーゾーンにあまりにも慣れてしまっているため、厳密には違法でも違法性を認識できないこともよくあるだろう。(毎回、違法性を認識しながらXVIDEOSなどのサイトを閲覧しているという人がいれば教えてほしい)

個人で面白いWebサービスを作ったとして、その違法性を認識できないまま、突然逮捕されるということもありうる。(極端すぎるかもしれないけど)

違法であるかどうかが明確に判断できない状況にあっては、Webサービスを作ることはリスクを伴うことになる。にこ☆さうんどの例で見ると、個人で負う責任としてはあまりに重すぎるように思える。

面白Webサービスを作ったばかりに逮捕されたくない。なんとなく暗い雲がたちこめてるように感じる。

補足2

タイトルが正直でなかったので「ニコニコ動画とにこ☆さうんど」に変えておいた。にこ☆さうんどって書くのどこか恥ずかしい。

photo by jbelluch

ブコメ

気分が乗ってきたのでブコメについて言いたいことを言おうと思う。

このサービス、オリジナリティも創造性も無いし、何にも付加価値つけてないよな。凡百の音楽無料ダウンロードアプリと同じ。斬新なサービスを生み出すためには、時にグレーゾーンを狙う必要があるのも確かだが。

id:shields-pikes

創造性の基準は人によって曖昧だし、にこ☆さうんどについてそれほど詳しいわけではないので完全に正しい評価はできないのだけど、少なくともニコニコ動画が丸々パクる程度にはアイデアに創造性があったと思う。